六本木ヒルズのジムでいつも思う、あるひとつの「皮肉な話」 No.0240

タイから帰って・・・

まずは、

六本木ヒルズのジムに行きました。

久しぶりです。


いつものように、
多くの人たちが汗を流しています。

外人さん。
お金持ちそうなおじさん。
モデルっぽいおねいさん。

みんな、汗を流して、
走ったり、
ウエイトトレーニングしたり、
自転車やったり・・・


みんな様々ですが、、、
たぶん、そこそこ、お金持ちなのでしょう。


ここへ来て、
トレーニングをしている人たちを見ると、
私はいつも、ひとつの「ある」話を思い出してしまいます。



・・・



２０年以上前、私は、現場の作業員でした。

お金をもらう為に、汗をかいていました。

このような暑い夏の日は、
「どうやって倒れずに一日を過ごすか」
を心配して作業していました。

作業服は汗をしぼるとジャーッと音がするほど
汗でびたびたになっていました。

体を使って稼ぐ。

それしか、当時の私にはなかったのです。



・・・



そのころ、監督が私にこういった事があります。

「俺たちは、お前たちみたいに体を使って
　しんどい思いして仕事したくないから、
　頭使ってこういう仕事をしているんや」


なるほど、そういうものなのか。

私は妙に感心してしまいました。

そして、その数年後、私は現場監督になりました。


少しだけ、、、

汗の量は減りました。



・・・



あれから２０年。

今は、頭を使って仕事をしています。

肉体労働とは、全く無縁の仕事です。
すでに仕事と呼べるかどうかもわからないくらい、
自分では何もしなくてよい状況を作りました。


現場で汗をかく事もなくなりました。


でも、わざわざ汗を流す為に
ジムに来ているのです。



・・・



体にいいものを食おう。

ネットでも、TVでも、友人知人も、
医者も、私にそう言います。


無農薬がいいよ、
野菜をとりなさい、
肉ばかり食べてはダメ。


お昼になると、野菜のブッフェに行ったりもします。
旅行先でも、できる限り、ビタミンや繊維質を取ったりします。


バイキングの朝食をやっているところへわざわざ行き、
世界共通の２０００円くらいの朝食をとり、
野菜と果物を食べます。



・・・



小さい頃、私はご飯に塩をかけて食べていました。

無農薬の野菜？

当たり前というか、自分の家の畑で作っている野菜に
農薬なんてありません。

貧しければ、自分の家の畑で取れた野菜を食べ、過ごすものです。

自分の家で飼っている鶏が生んだ卵を食べ、
その肉をさばき、家で食べるのです。


無農薬な野菜と、超健康な鳥の肉。

貧乏なら、むしろ当たり前のことです。


いまは、わざわざそれをネットで探して、
ありがたがって、高いお金を払って食べるのです。



・・・



もし、私がいま肉体労働をしていたら、
メタボや成人病なんてほとんど関係ありません。

わざわざ汗をかく必要なんてないのですから。

ジムなんて、行く必要すらありません。

もし私が、自分で野菜作って食べていたら、
オーガニックなんて、、、

べつだん当たり前。



・・・



２０年前、、、

単純な肉体労働をしていた私は、
私は「体を使わなくていい仕事」を目指して、
今は自分が存在すらしなくてもいい仕事を、、、


頭を使って作り上げようと頑張りました。


もっといい生活を望み、
さらに上を望み、
行き着く想像の極みに行き、

そして・・・

今の生活になりました。



・・・



私とは生きてきたルートは違うかもしれないけれど、

ヒルズにいるジムのおじさんたちも、
オーガニックなレストランで食事しているおねいさんたちも、
何らかの努力の末に今の生活を手に入れたのだと思います。


で、、、


もし貧しければ、
嫌々ながら当たり前にやっている、
そんな事を、


高いお金を払って、、、

自分から進んで手に入れようとしているのです。


いつも、ヒルズのジムや、オーガニックレストランへ行くと、
なぜか、不思議な感じがしてしまうのです。



・・・



以前、NYにいた村越くんという人が
自身のブログに「ある」話を書いていました。


何となく印象に残ったので、
覚えていました。


いつも、こういうとき、この話を思い出します。

原文とは少し違うかもしれないけど、
こんな話です。



＊＊＊＊＊＊＊＊＊



スペインの片田舎で、おいしい魚を出す小さな旅館を
夫婦で経営している、そんなおじさんがいました。


そこに、アメリカのマーケッターが泊まりにきました。

おいしい魚を食べたそのアメリカ人は、
旅館の主人にこう言いました。


「この魚は、あなたが取ったんだね。
　あなたは、どんな毎日を送っているの？」

「んー、朝になったら漁に出て、
　その日食べる分の魚を取るでしょ、
　その後昼食をとって、女房と昼寝して、
　夕食の準備に魚を料理して、
　お客さんや友達と一緒にお酒飲みながら食べて、
　後はギターを弾きながら、歌って踊るんだ。
　ああ、これで一日は終わりだね」


それはもったいないことだ、とアメリカ人は言い、
つづけておじさんにビジネスプランを話します。


「いいかい、君はもっと漁に出るべきだ。
　そして、たくさん魚を捕って、市場に売るんだよ。
　この魚はとてもうまいから、人気が出るはずだ。
　そしたら、船を買って、もっとたくさん魚を捕るんだよ」


「そしたらどうなるの？」


「そしたら、もっともっと船を増やして、
　そうだな、従業員も必要だね、会社を興そう。
　たくさん魚を捕って、たくさん売って、
　利益を出して、上場したら、凄い事になるよ」


「それでどうなるの？」


「そうなったら、考えられない事になるよ。
　株を全て売却するんだ。君は億万長者になるんだよ」


「そしたらどうなるの？」


「そうだね、君は好きな事をして人生を送る事ができる。
　朝から好きなだけ釣りをして、その日に必要な魚を捕って、
　昼食を食べたら奥さんと昼寝して、
　その日捕ったおいしい魚を食べて、
　ギターを引いて仲間と歌って踊るんだ。
　どうだい？
　素晴らしいだろう？」




＊＊＊＊＊＊＊＊



六本木ヒルズのジム。


ある程度人生に成功した人たちが、
みんな汗をかいて、、、


走ったり、
ウエイトトレーニングしてみたり、
自転車こいでみたり、、、


私はいつも、上の話を思い出してしまいます。


人生とは、、、

本当に面白いものですね。