その昔、キョクシン空手のマス大山が牛を殺したという。
マンガを読んでその気になった私は、豚を倒しにいったことがある。
当時、私は中学校一年生だった。
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マンガの主人公が牛なら、私は「豚くらいで相応だろう」と思った。
「みんな、ついて来い!今から、オレが豚を倒すところを見せてやる!」
と宣言して、友達を何人か引き連れて養豚場に行った。
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かわいいぶたさん。
ぶうぶうの、1メートルくらいのぶたさんがたくさん戯れていた。
天気のよい昼下がり。
ピンクのも、白いのもいる。
エサをもらえると思い、なぜか私たちのところに寄ってくる。
ぶうぶう。
かわいー、などと言う輩もいた。
できれば、私も家で飼いたいと思った。
そんな事ではいけない。
これは戦いなのだ。
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戦いに情け容赦はいらない。
私はまずは相手を知らなければならないと思い、近くにある、漬物石くらいの大きな石をぶつけてみた。
ドスン。
ぶたさんは、「ぶうぶう」と言いながら何もなかったように逃げていった。
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とっとっと(走り去る音)。
石の一撃は全く効かなかった。
豚は強い。というか、動物は、ちょっとやそっとではダメージを受けない。
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戦いの行方は明らかだ。確かに、こちらが負ける事はない。
ブタは攻めて来ないから。
でも、勝てる気もしない。
やめた。
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「豚は強いんだよ」と意味の分からないことを友人たちに言い残し、私は家に帰った。
マス大山のように「牛殺し」ではなく、私はその日から「豚いじめ」と呼ばれた。
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