2022年5月20日金曜日

ゴッドファーザー NO.1250

 ウチの社長の1人、桑原ちゃんに子供が産まれた。

よく似てて、可愛い。
「この子のために、もう少し頑張らなければ、と思うんですよ」と彼は言う。
 
・・・
 
話は変わるが、友達に子供が産まれると、よく名付け親を頼まれた。
 
これって、そんな簡単なことではない。やはりある程度の責任が伴う。
 
名付け親とは、、、
ゴッドファーザーのことだからね。
  
そして、ゴッドファーザーとは、後見人、代父のことでもある。
 
 
・・・
 
もう30年も前、ガキの頃から仲の良い友達とバーで飲んでた時のこと。
 
「なあ、やっちゃん(私、ヒロタのことね)」
 
なあに?
 
「ガキができたわ。男や」
 
それはおめでとう。
 
「それでな、名付け親になってくれ」
 
ええよ。
 
「ただなあ、名付け親って言うのはな、ゴッドファーザーなんやからな。この子が困ったら、生涯面倒見たってくれなアカンねんで」
 
りょーかい(・ω・)ノ
 
・・・
 
忘れもしないその日、私はバーのカウンターで、冷凍庫でキンキンに冷やしたタンカレーというジンを飲んでた。なので、名前かあ、そうだね、、、
 
「ジン」
 
と言った。
 
その生まれたばかりの子、彼の名はジン、「仁」になった。
 
・・・
 
それから二十数年後、仁君は大きくなり、たまたまちょっとしたことで、東京の慈恵医大に入院した。
 
私はその友人と、仁君の病院に行った。
 
彼が大きくなってからはほとんど会ったことはないが、ゴッドファーザーである私のことはどう思っているのだろう。
 
「ファーザー」と呼ばれて、手の甲にキスされるのだろうか。ひょっとして、ドン・コルレオーネみたいな感じになるかも知れない。
 
ちょっとドキドキしながら、私はこう切り出した。
 
「君が仁君か」
 
はい。
 
「何か困ってることはないかい?俺は君のゴッドファーザーだからねえ」
 
仁君はボソリっと、、、
 
「…すいません、別に困ってません。それと、、、おじさんが何のことを言ってるのかよくわかりません」
 
どうやら、誰も彼に私のことを伝えてなかったようだ。
 
意味ないやん。
 
・・・  
 
日本人だけではない。タイの友人トンさんも、私にゴッドファーザーを頼んできた。
 
アユタヤ銀行に勤める彼は、ネイビーの将校を父に持ち、兄弟は王室御用達の医者をしている、つまり軍と王室にコネを持つ、ある意味最強一家だ。私はタイに行くとその家族によく世話になっている。
 
ある日、彼はこう言った。
 
「ヤッチャン(彼もこう呼ぶ)、今度男の子が生まれる。日本語でもタイ語でも通る名前をつけてほしい(タイ語)」
 
りょーかい(*´∀`)ノ
 
・・・
 
また、ゴッドファーザーになる。良かろう。
 
しっかりと良い名をつけよう。
 
(タイでは本名はめちゃ長い。それとは別にあだ名みたいなものをつける。それを普段使う)  
 
その時私は、その彼の家で、ドラマ「医龍」を見てた。タイでも人気なのだ。
 
主人公は朝田龍太郎。
 
何でも治してしまう、スーパードクターだ。「リュウちゃん」と呼ばれてる。
 
トンさん一家も医龍が大好きだし、発音も悪くない。
 
・・・
 
私は決めた。
 
トンさん、「リュウ」はどう?日本語としても竜はとても縁起がいい。王の象徴でもある。
 
いいねえ、とトンさん。
 
リュウ。いいじゃないか。
 
・・・
 
リュウちゃんは無事に大きくなり、2歳くらいになった頃、、、
 
私は小さな違和感を覚えた。
 
家族達がリュウちゃんを呼ぶ「発音」が、どうもリョウちゃんに聞こえるのだ。
 
まあ、タイ人発音だからかなー、なんか違う気がするなー。
 
ある日リュウちゃんの名前が書いてある書類を見た。
 
こう書かれていた。
 
「Ryo」
 
リョウじゃん。
 
・・・
 
さてここで、冒頭に出てきた、桑原ちゃんの子供の話に戻る。
 
私はふと、桑原ちゃんの子供にも名前を考えてあげるべきかも知れない、と思ったのだ。
 
私はゴッドファーザーだ。電話してあげよう。
 
「プルルル、プルルル、もしもし、桑原ちゃん?」
 
「はい、会長」
 
「子供の名前、考えてみたよ」
 
「はあ」
 
「くわ太郎ってどう?桑原くわ太郎」
 
「………いえ結構です」
  
名付け親というものは、決して簡単なものではないのである。



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