始まりは、エリート華僑の、女性の一言だった。
「マーさん?友達ですよ?」
テーブルを囲んでいたみんなは色めき立った。ええ?ジャック・マー?友達なの?
驚くみんなを尻目に、その女性は、我々に携帯の画面を見せた。
やりとりの相手は、まごうことなきジャックマー。アリババの創始者だった。
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テーブルを囲んでいたのは、私がお世話になっている経済塾のメンバーたち。ほとんどが東証一部上場企業の創業社長。一人が質問する。
「ひょっとして、会えたりしますか?」
ああ、大丈夫よ。会いに行きますか?2月くらいとか?数カ国語を自由に操るその中国人女性は、流暢な日本語で答えた。
そして「ジャックマーさんに会いに行こうツアー」がその場で決定した。
去年の年末の話になる。
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私などは、その中でペーペーのペーちゃんなのだけれど、そのテーブルに同席していた都合上、一緒に同行させてもらえるかも、と思ったりした。
まあ、偉いさんたちの後ろで「あれがマーさんかあ」と見てるだけでも、行く価値はあるだろう、てな感じ。
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年が明けて、一緒に行く予定だった人に聞いた。マーさんツアー、日にち決まりました?
「ああ、あれね、中止になった」
聞くと、アリババ視察などに行った日本人がスパイ防止法案で、どしどし拘束されてる、と。北大の教授さえも拘束されたそうな。
上場企業の社長が拘束されたら、株価などへの影響とか、たまったもんじゃないもんねえ。
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別口で、私は2月に、旧旅順(大連)から奉天(瀋陽)へのツアーも計画していた。
このFBでも、「行ってきマウス」とかって、調子に乗って報告したりもしてた。
この二月は中国漬けだなあ、いっそぐるっと回るのもアリだなあ、でも日にちキツいかなあ、なんて考えながら。
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ご存知の通り、今の中国は武漢肺炎で旅行どころではない。国内の移動すらままならないだろう。
奉天行きは2月、春節の時期。新年快楽(シンニェンクワイラー)の発音を練習したりしていたんだもんねえ。ちょうどこの肺炎騒ぎとドンピシャだよ。
でも、マーさんツアーの拘束問題でビビって腰が引けていたおかげで、ズルズルと、チケット手配などもせずにいた。
(私などは拘束されたら内臓抜かれそうだよお)
結果、私たちを奉天に案内する中国の友人も、春節の帰国は叶わなくなった。全てのチケットは結果的に不要だったことになる。
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あの年末、ジャックマーに会えるか?とときめいたり、日露戦争探訪の旅!とマイナス30度の凍てつく奉天やハルピンの荒野を想像していた頃、、、
今現在、世界を最も騒がせている武漢ウイルスはこの世に存在すらしていなかった。
わずか数カ月前のこと。
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誰にも未来はわからない。そして、予測はあまりにも役に立たない。
先の予想は必要だが、半分くらいは、
「まあ、何があるかわからんからなあ」
くらいにしてた方が、むしろ現実的だったりする。
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武漢肺炎だけじゃない。オーストラリアの火事であったり(誰が、世界中のコアラの半分が死ぬと予想した?)、世界は数ヶ月先を予想できなくなってきてる。
別に何が学びってわけじゃないけれど、人生ってこういうものだよな、と感慨深いものがあるわけです。
そんだけなんだけどね。
とにかく、この先にどんな世界が待ち受けていても、しっかりと生きていける、そんな強さを身につけなきゃダメだね。
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奉天、行きたかったなあ。涙。
写真は全く意味ないよ。日露戦争で騎馬隊だったひいおじいさんを偲んでいるところ。せめて、馬賊たらん。
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